menu

領域概要

概要

本研究では、細胞内ナノスケール空間の「局所高温」を軸とした温度シグナリングの熱力学的・伝熱学的な実態を、最先端の分光計測と熱測定法を融合・開発して解明し、新たな学問分野「細胞内ナノ熱科学」を構築します。さらに、この研究の応用として「局所高温」を非侵襲的に検出する技術を開発し、生殖医療における受精卵の健全性評価への活用へとつなげます。本研究は、多様な熱計測技術や熱力学理論研究の新たな方向性を提供するだけでなく、分子生物学における新潮流を生み出し、高度に学際的な研究分野の創出を目指します。

A01:細胞内「局所高温」の熱力学的実体の計測と理解

計画研究A01では、蛍光性温度プローブ分子を用いて観察される細胞内「局所高温」や細胞内熱環境で誘起される生体分子の熱泳動について、熱工学・伝熱工学の立場から細胞内の熱・エネルギー・物質輸送に迫り、その熱力学的実体の理解を目指します。

<関連論文>

A02:細胞内エネルギー緩和現象を可視化するラベルフリー顕微鏡の開発

計画研究A02では、1800 nm~2200 nmの水の分子振動結合音バンドでの吸収を利用した近赤外フォトサーマル顕微鏡の開発を行い、各種生体高分子の構造緩和時間の定量による時定数の長い未知のエネルギー緩和の存在の検証や、生細胞内の水和状態イメージングによる未知のエネルギー緩和現象の細胞内マッピングを通して、蛍光性温度プローブにより計測される局所温度の解明に挑戦します。

<関連論文>

細胞内熱環境の生物学的意義の解明と卵子および初期胚の細胞診断技術の基盤形成

計画研究A03では、計画研究A01の顕微赤外分光法(FT-IR)、計画研究A02の世界最高時空間分解能の赤外フォトサーマル顕微法を取り入れることにより、高空間分解能かつラベルフリーのイメージングで細胞内局所温度や水和状態の計測を実現し、細胞内熱環境が受精・発生においてどのように寄与するのか詳細な解析を行い、細胞内熱環境の生物学的意義の解明と、卵子および初期胚の細胞診断技術の基盤形成を図ります。

<関連論文>

総括班

本領域の推進には、グループ間の垣根を取り払った異分野連携が必須となります。総括班は異なる学問的背景を持つ各研究拠点間で人的・知的交流がスムーズに行われるよう、また若手の成長・ネットワーク拡大を重視しながら各種の調整を行い、研究領域の発展を促進します。